秘密の地図を描こう
153
「そう、ですか」
バルトフェルドからネオの言葉を聞き終わった後、キラはそう呟く。
「僕としては、彼らの希望を叶えてあげてもいいと思うけど……でも、決めるのはカガリだから」
そう言いながら、彼は視線を移動させた。
「……そうしてやりたいが、今は無理だな」
ジプリールとセイランのことが片付くまでは、と彼女は言う。
「マインドコントロールがどこまで食い込んでいるのか。それがわからないからな……それをしっかりと確認してからでないと、安心できない」
自分個人の感情はともかく、指揮官としては……と続ける。それは正しいのだろう。そのくらいはキラにもわかっている。
「落ち着けば、モルゲンレーテの専門家が解析に協力してくれるはずです」
マリューがそう言えば、カガリは小さくうなずいて見せた。
「万が一のことがあってはいけない。そう言うことだ」
もっとも、と彼女は笑った。
「戦闘中でなければ、今のままでもかまわないだろう」
別段、困ったことはない。それに、必ず誰かが見張っているから……と続けられたただの現実の確認だ。
しかし、それがどうしては気にかかる。それは、自分達の出生に関わるから、だろうか。キラは心の中でそう呟いた。
「まぁ、そんなところで妥協するしかないな」
バルトフェルドもうなずく。
「ようは、ジプリールの身柄をさっさと確保してしまえばいいだけだ」
バルトフェルドがそう言いきる。
「とりあえず、モルゲンレーテを通じて軍には連絡を取っているわ。協力をしてくれる人たちも多くいるから大丈夫よ」
すぐに結論が出せるはずだ。マリューがそう言って微笑む。
「何にせよ、オーブでの厄介事を片付けなければ何も始まらないがな」
ため息とともにバルトフェルドがそう言う。
「ジプリールの居場所の特定、ですね」
一番厄介なそれを何とかしなければいけない。キラは心の中でそう呟く。
「とりあえず、オーブ本土のセイラン関係の住居や工場を洗い出しておきましょう」
ニコルがそう言ってきた。
「おそらく、そのどこかにいるはずです」
さすがにモルゲンレーテや軍の施設に彼を連れ込むはずがない。彼はそう続けた。
「そうだな。どちらにしろ、そう簡単には見つからないだろうな」
それでも、何とか探さなければいけない。カガリはそう言う。
「キラ。それにニコル。すまないが……」
「わかっているよ。ハッキングしていいんだよね?」
キラは即座にそう聞き返す。
「こんな状況だ。不本意だが、許可をだす」
無理はするな、とカガリは口にする。
「僕がちゃんと見張っています」
任せておいてください、とニコルも口を挟んできた。
「そうだね。適当なところでパソコンから引きはがしてもらおう」
バルトフェルドがそう言ってくる。
「もちろんです」
それにニコルはしっかりとうなずいて見せた。
黒塗りの車の中に人影を確認する。
「……やはり、いたか」
この男がいれば、オーブがどうなるか。そんなことは想像に難くない。そうなれば、悲しむ人間は一人や二人ではないはずだ。
「さて、どう動くべきか」
残念なことに、今回ばかりは勝手に動くわけにはいかないだろう。
彼の存在をうかつに消せば、戦火が収まることはない。抹殺できれば一番手っ取り早いのだが、とカナードはため息をつく。
「仕方がない。マルキオに相談するか」
彼からの依頼があればそれなりに動けるはずだ。
「あるいは、あいつらに合流するか、だ」
どちらにしろ、彼の判断を仰いだ方がいいだろう。そう判断をするとカナードはそのままきびすを返す。
「さっさと戻ってこい」
そう呟くと、彼は歩き出した。